AIが「ブランドを却下する」時代——23%の消費者がAIに説得され離脱し、ChatGPTは競合の広告を締め出した

AI審判員

2026年9月10日、ブランドとAIの関係を根底から問い直す2つのニュースが相次いだ。ひとつは、AIが消費者をブランドから引き離しているという大規模調査の結果。もうひとつは、OpenAIが自社の競合となるAIツールのChatGPT内広告を静かに締め出したという報道だ。どちらも「AIを使えばブランドが伸びる」という楽観論に、冷たいメスを入れる内容となっている。

ニュース①:AIが23%の消費者を「ブランドから引き離した」——ICERTIAS 8,000人調査

国際認証・評価機関ICERTIASが57カ国8,000人を対象に行った調査によれば、調査対象者のうち55%がすでにAIでの購買経験を持ち、そのうち23%が「真剣に検討していたブランドをAIに否定された」と回答した。

さらに衝撃的なのは購買行動の変容だ。

  • 61%が「20製品を比較するより、AIが3製品に絞ってくれる方がいい」と答えた
  • 49%が「AIの推薦があれば、ブランドのWebサイトを訪問せずに購入する」と回答した
  • AIが推薦した無名ブランドでも、独立した評価・受賞歴があれば65%が購入を検討する
  • 「知名度のあるブランドなら10%高くても買う」という消費者はわずか24%にとどまった

AIがブランドを却下する理由は、感情的なものではない。「より良い価格」「より優れたスペック」——機械が読める、比較可能な数値の差だ。

ニュース②:OpenAI、競合AIツールのChatGPT広告を静かに締め出す——Adobeが被弾

The Informationの報道によれば、OpenAIは画像・音声生成ツールのうち、自社と競合する製品カテゴリーのChatGPT内広告承認を停止した。被害を受けた一社がAdobeである。同社はAcrobat StudioとFirefly(画像生成AI)のChatGPT広告をWPPと組んで展開していたが、その広告キャンペーンが突如として承認されなくなったとされる。

同時に報道されたもうひとつの事実が、より本質的な問題を示している。ChatGPTが「画像編集ツール」「画像生成ツール」など特定カテゴリーの検索に対して、外部の引用リンクを返さなくなっているというものだ(2026年9月10日時点)。

OpenAIはこの両方について公式なポリシーとしての発表はしておらず、「広告はケースバイケースで審査する」という包括的な裁量条項を使う形をとっている。一方でChatGPT広告事業は急拡大しており、8月31日には年換算の収益ランレートが10億ドル(約1,500億円)に達したと発表した。インド・欧州・中東・北アフリカでも直接広告枠の購入が可能になっている。

Spike Analysis:「プラットフォームの審判者化」と「引用資本の剥奪」

AIは、新たな棚割り権力へ

かつてブランドにとって最大の「棚」は、スーパーマーケットの売り場だった。棚の位置が売上を決めた。いま、その棚はAIの応答文の中にある。そして棚の主は、プラットフォームだ。

ICERTIASの調査が示した事実——「49%がAI推薦だけでWebサイトを訪問せず購入する」——は、ブランドが自社サイトで語ってきた物語、哲学、世界観が、購買プロセスから完全に迂回されつつあることを意味する。消費者はブランドと対話せず、AIとだけ対話する。ブランドはそのAIに、「正しい言葉」で自分を説明できているだろうか?

AIがブランドを却下する理由は「身も蓋もないもの」だ——より良い価格か、より優れたスペック。感情的なブランドロイヤルティを守り続ける消費者は、4人に1人しかいない。(ICERTIAS, 2026)

OpenAI問題が示す「引用資本の剥奪(Citation Capital Revocation)」という新リスク

Branding Spikeはこれまで「引用資本(Citation Capital)」という概念を用いてきた。AIに引用・推薦されることが、ブランドの新しい資産になるという考え方だ。

今回のOpenAI/Adobe問題は、その引用資本がプラットフォームの判断一つで剥奪されるという現実を初めて明示した。広告の締め出しだけでなく、検索クエリに対するリンク返却の停止——これはオーガニックな引用可能性そのものを塞ぐことを意味する。

Adobeは単に広告費を無駄にしたのではない。競合プラットフォームの中で、自社の製品が「存在しないかのように扱われる」状態に置かれた。これを私たちは新たに「引用資本の剥奪(Citation Capital Revocation)」と呼ぶ。

二つのニュースが重なって見える、ひとつの構造

消費者調査と広告規制、一見別々のこの二つのニュースは、同じ構造を持っている。

  • 消費者はAIというフィルターを通してブランドを評価する
  • そのフィルターのルールはプラットフォームが決める
  • プラットフォームは自社の利益に従って、ルールをいつでも変える
  • ブランドにはそれを止める手段がない

「AIを活用してブランディングを強化する」という語り方は、いま根本的な問い直しを迫られている。AIはツールではなく、ブランドの生殺与奪を握る審判者になりつつある。

ブランドが今すぐ問うべき、たった一つの問い

ICERTIASの調査は答えをひとつ示している。「独立した認証・評価があれば、65%が無名ブランドでも購入を検討する」。AIは権威を信頼する。ならばブランドがすべきことは、人間の感情に訴えることだけでなく、機械が読める形で「信頼の根拠」を構造化することだ。

スペック、独立評価、第三者認証、実績データ——これらをAIが引用しやすい形で整備することが、次の競争優位になる。ブランドの哲学は大切だ。しかしそれだけでは、AIの棚に並べてもらえない時代が来た。

日本市場への示唆

日本ではまだAIショッピングの利用率は欧米に比べて低いが、ECモールのAIレコメンド機能(楽天・Amazon・Yahoo!)はすでに購買行動を左右し始めている。さらにChatGPT・Gemini・Perplexityを使って商品を調べる行動は、特に20〜40代の間で急速に広がっている。

日本ブランドが注視すべきは二点ある。第一に、製品情報の「AI可読性」——スペックや比較データを構造化されたデータとして整備しているか。第二に、プラットフォーム依存リスクの分散——ChatGPT一極集中の広告・引用戦略は、今回のような「裁量による締め出し」に脆弱だ。国内のAI検索(Yahoo! AI、楽天AI、LINE AI)と合わせた多チャネル展開が急務になる。

出典

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